2008年7月12日土曜日

『モンテッソーリ教育』

 今日は、HANDS-FDFのメーリングリストで、『モンテッソーリ教育』が紹介された。
 簡単に言うと、子供の成長の可能性を信じ、自由に学ばせる教育法だ。
 O先生が、こんなコメントをしていた。

「教育の根底にはその人の可能性と能力をしんじるということが流れていると思います。先回りして言いたくなるのをいかにぐっとこらえるか...」

 この言葉、僕の心に深く突き刺さりました。

 後輩の研修医達は、僕よりも、ずっとずっと素晴らしい能力を持っている人がたくさんいます。彼らが、その能力を発揮できるように、いかに接するか。自分で考えさせることなく、簡単な方法を教えちゃったりしたら、せっかく、その研修医が、能力を発揮できたはずの芽を摘んでしまうかもしれません。それは、研修医を尊重している事にならないし、他人を尊敬している事になりません。短期的には、よかれと思ってやった行動が、長期的に見ると、その人を侮辱してしまう事にもなりうるのです。目の前の事だけでなく、数年後、数十年後の未来も想像して、行動する事がいかに大切かを考えさせられますね。

2008年7月8日火曜日

診療グループのまとめ役

 (1)プライマリケアの専門医が診療グループのまとめ役としてチーム医療に参加する

 昨日、日本医事新報の記事で、上記の内容を紹介したのですが、まとめ役として機能するには、専門医制度以外にも、制度を整えなきゃいけないと考えました。

 例えば、心臓カテーテル検査が、その地域で、年に何件行われているのか、がわからないと、どのくらいの数の検査ができる循環器内科医が必要なのかもわからない。

 このように、その地域の疾患のデータ、病院の機能のデータがわからないと、いくら、プライマリケア専門医が声を出しても、誰も聞いてくれないと思います。

 これまで以上に、病院の情報開示が必要になってくるでしょうし、その役割を担う職種の育成なども必要になってくると思われます。

 それにかかる財源をどうするか。

 医療費にするのか、医療の質維持費と新しく作るのか。

 その費用に見合う質の保証ができるのか、できないのであれば、財源確保は難しいでしょう。

 また、情報収集に、その地域の医療機関の電子カルテの情報を統合して、利用できるようにすれば、効率化も図れるかもしれません。

 専門医制度を整えるのは、その第1歩だとは思いますが、それ以降の2歩、3歩を考えないと、記事に載っていたような医療制度の構築には、時間がかかるのではないでしょうか。

2008年7月7日月曜日

新しい専門医制度の確立を

 今週号の日本医事新報に、6月26日に、日本学術会議が医療崩壊回避に向けた要望書を政府に提出したという記事が載っていた。
 内容として、我々、家庭医に関わる部分を抜粋すると、
(1)プライマリケアの専門医が診療グループ(*)のまとめ役としてチーム医療に参加する
 *「病院と診療所、勤務医と開業医の区別亡く、必要な医療機能をグループとして運営する」
(2)要望書を提出した桐野委員長の私見として、「特に重要なのはプライマリケアの専門医。医療の情報量が増えているので、プライマリケア独自のトレーニングが要求される時代が来るだろう」との見通し

 私としては、医療・保健・福祉の全体を見渡せる人材の育成を加えたい。それを医師がやるのかどうかという問題はあるが、その地域で、何が必要で、何にお金を配分していくか、考えられる人材が必要であろう。医療よりも介護が必要な地域では、医療費よりも介護にかかる費用にお金を配分した方が、効率もいいし、住民もハッピーになれる。
 現時点では、その役割にやりがいを感じている家庭医が適任と思われるが、どうでしょうか。

コミュニティ形成

 現在、若手家庭医部会執行部では、いかに、若手のコミュニティを形成するかで、メーリングリスト上で、ディスカッションしています。
 若手の悩みなどの思いを、同じ若手と共有できるようにというのが最初の趣旨だったのですが、ふと、これも、レバレッジになるのではないかと思いました。
 その1つが、学会認定の後期研修プログラムの魅力を増すことにつながらないかということです。つまり、こうです。今、学会認定の後期研修プログラムに参加している研修医だけが参加するメーリングリストを作成することを学会に提案しているのですが、施設をこえて、若手がこんんな形でつながっているというのは、聞いたことがありません。
 「学会認定後期研修プログラムに参加すると、同じ立場の研修医とコミュニケーションがとれます!」ということが、魅力の一つになるかもしれません。そして、学会認定後期研修プログラム全体が、盛り上がっていくのではないかと考えています。やはり、研修医が1人でも来ないと、自分のところのプログラムを改善しようにも、改善できません。まずは、誰か、1人でも入ってもらえるように、全体として、魅力あるものにしていきたいです。
 そして、2つ目は、同じ質を確保することにつながらないかということです。
 現在、家庭医として働いていて、こんな話を耳にします。
 「風邪だから、抗生剤は出したくないけど、自分が出さなければ、患者さんは他のところでもらうだろうから、出してます。」
 「せっかく、入院して、歩けるようにしたのに、あの施設に行ったら、また歩けなくなって帰ってきた。」
 これは、医療・保健・福祉で、同じ質のものが提供できれば、解決する問題ではないかと思うのです。それには、他のところがやっていることを知ったり、その質について議論する場が必要です。若手のコミュニティが、30年後には、日本全体に広がって、日本のどこでも、同じ質の家庭医療が受けられるようになるといいなと思っています。
 医療・保健・福祉は、一施設で完結するものではありません。うまく連携するためにも、質の確保をいかにしていくか、日本全体で考えなければと思います。
 でも、私がやることは、まずは、目の前の仕事です。それが、いつか、レバレッジとなることを想像して・・・。