2008年6月7日土曜日

「最期まで自宅」は1割、国の目標と乖離

 MFCでは、在宅医療に力を入れ、在宅死を希望される患者さんには、その実現をお手伝いさせていただいておりますが、それを望む方が少ないという現実に、直面しました。
 私が、家庭医として出来ることは何だろうかと考えると、自宅でも安心して過ごせるような在宅医療を提供することや家族の負担が軽減されるように、ケアマネジャーと連携して、介護者を支えるなどは、日々の診療の中で実践しています。
 しかし、現実には、多くの人が病院での治療を希望されています。しかし、多くの人が病院での治療を希望しているのだから、病院数や病院で働く医師の数をもっと増やしましょうというのも、現実的な策ではないことは明らかです。
 国民のニーズを受け止め、それにどう答えていくのか、日本に住む人たちが幸せな最後を迎えるには何が出来るのか、家庭医としての自分の役割だけを考えていては、解決策を見いだすのは難しいと思いましたので、様々な立場の方々と対話が出来る機会を作っていきたいです。

ーー以下、記事引用ーー
「最期まで自宅」は1割、国の目標と乖離

 国民の6割が病院以外での看取りを希望しているとして、在宅死の割合を2025年までに4割に引き上げるという厚生労働省の目標について、神奈川県保険医協会が実施した県民意識調査では、「最期まで自宅を望む」と答えた人が1割程度にすぎず、厚労省の“思惑”と現実には大きな乖離(かいり)があることが6月6日までに分かった。青森県保険医協会が昨年行った調査でも、同様の結果が示されており、終末期医療の在り方が問われそうだ。

 終末期医療については、厚労省の「終末期医療に関する調査等検討会」が04年にまとめた報告書で、「(看取りについて)自宅を希望している国民が約6割」と発表。これを受け、厚労省は「患者の意思を尊重した適切な終末期医療を提供する」として、25年までに自宅等での死亡割合を現在の2割から4割に引き上げることを目標に掲げている。

 神奈川県保険医協会では、脳血管疾患の終末期医療に関して、県民がどう考え、どのような不安を持っているかなどを把握するため、60歳以上を対象に意識調査を実施。3月からの約1か月間に回収できた143件を集計した。

 脳血管疾患や認知症などで入院中、退院を勧告された場合に希望する療養場所については、「別のリハビリテーション病院」が39.8%、「長期療養できる医療施設」が14.6%と、医療系の施設が過半数を占めた。これに「介護施設」の12.5%を合わせると、自宅外を望む人が66.9%となった。
 一方、「自宅」と答えた人は21.6%。このうち3分の1以上の人が「現在は(自宅で療養する)条件がない」とした。

 また、自宅で療養中に肺炎などの疾患を併発した場合の療養場所については、「(必要な治療を受けるために)病院に入院を希望する」が58.7%、「介護施設」が15.3%で、「(医療や介護を受けながら)最期まで自宅を望む」は12.5%にとどまった。この「最期まで自宅」という希望に関連して、実際に「自宅で看取ってくれる」と答えた人はゼロだった。
 病院に入院することを望む人に、その理由(複数回答)を尋ねたところ、「回復の可能性があるなら、治療を受けたい」が53.5%、「自宅や施設での治療内容が不安」が45.2%に上った。

 さらに、家族による自宅での看取りについては、「無理」が45.9%で、「看取ってくれる」は9%にすぎなかった。
 自宅で最期まで療養する場合の課題(同)については、「家族の負担が大きすぎる」が55.9%、「(容態の)急変時の対応に不安」が49.6%、「家族の高齢化」が43.3%などだった。

 在宅死については、青森県保険医協会が590人の県民を対象に実施した調査でも、脳血管疾患や認知症などで入院中、退院を勧告された場合に希望する療養場所について、「リハビリテーションができる病院」が47%、「長期療養できる医療施設」が14%と、医療系の施設が60%を超えており、「自宅」は11%だった。

更新:2008/06/06 18:15 キャリアブレイン

ーー引用ここまでーー

2008年6月6日金曜日

HCFMのOBとの対話で元気になれた話

 昨夜、家で、今週末に行われるHCFM内のフェローシップの課題を考えていたら、突然、Skypeに着信!(Skype使ってますか?)
 この春、HCFMの後期研修を終えて、京都市内の病院で働くM先生からでした。「今日は早く帰してもらえました!」の一言に、心臓血管外科で研修中のM先生とこんな風に話せるチャンスは滅多にないと思い、タイムマネジメントとしては、重要度も緊急度も高かったフェローシップの課題は次点に落ち、M先生との対話が1番になりました。
 M先生は、私が多くを学ばせていただいたHCFMのOBの一人で、昨年の6月から今年の1月まで、8か月間、私の働く東室蘭サテライトクリニックで、研修をしてくれた人物です。
 私からは、東室蘭サテライトクリニックの患者さんの近況をお話しし、M先生は、今、働いている病院での研修状況や日々感じたことなどをお話しして下さり、話に花が咲いて、気がついたら、2間近い時間が過ぎていました。すでに、私の寝るべき時刻は過ぎており、今朝も寝坊しないか心配でしたが、なぜか、いつもよりすっきり目覚められました。
 その理由は、M先生が、このブログをたま〜に、見て下さっていて、ブログのタイトルに共感してもらえ、嬉しかったのもあるのですが、どうも、それだけが理由ではないようです。今回、日本家庭医療学会に参加して、かなり元気をもらえたのですが、M先生との対話も、かなり、元気をもらえました!
 私の元気の素が、ここにありそうです。つまり、仲間との対話と仲間の元気な姿を見ることが元気の素なんですね。
 そう思うと、先週、睡眠時間確保のために、朝の勉強会を欠席してしまったのは、判断ミスでした・・・。

 皆さんの元気の素は何ですか?

2008年6月4日水曜日

世代を超えた家庭医の交流

 日本家庭医療学会のメーリングリストで、理事でいらっしゃるある先生が投げかけたスレッドが盛り上がっています。
 私は、今、家庭医としての第1歩を歩み始めた全国の後期研修医達の将来を見据えたその先生の発言の中に、次の時代の家庭医療を見据えた温かいまなざしを感じて、嬉しくなりました。
 始まったばかりの後期研修プログラムとはいえ、その期間は、3年間。その3年間は、あっという間に、過ぎてしまい、家庭医としては、まだまだ未熟なまま、巣立っていきます(少なくとも、私はそうでした)。
 そして、その後、1か所の診療所で長く働くといった経験を通して、まさに、研修が終わったあのときが、家庭医としての第1歩を踏み出したときだったと気づくのです。
 私も、HCFMの4年間の研修を終えて3年になりますが、継続性という家庭医療の醍醐味を味わい、研修を終えて1人前になれたと思っていたあのときこそ、1人前の家庭医になるための第1歩を踏み出したときだったんだと痛感しています。
 この3年間は、日々の臨床で悩んだり、自分の未熟さを感じたりすることもまだまだ多く、前を行く先輩の話を聞きたいと思うこともありましたので、今回の理事の先生のご提案は、非常にありがたいものだと思っています。
 最近のうちの後期研修医は、そんな我々の姿を見て育っているからか、先輩であるベテラン家庭医のところに、選択研修でお邪魔するものもいます。
 その中で、プライマリ・ケア学会の評議員でいらっしゃる矢吹清人先生を師事した研修医がいるのですが、そのときのことを、矢吹先生が、ご自身のブログで、紹介して下さっていました。
 そのブログの中で、
「若い医師に自分の医療のエッセンスを伝えることも、クリニックを医学研究のために開放することも、これからの町の医者のつとめと考えている。」
というお言葉を見つけ、このように、応援して下さる先輩家庭医がいらっしゃることがとてもありがたく思え、幸せな気持ちになれました。
 こんな風に、世代を超えて、「みんなで一緒」に、日本の医療をよりよいものにするために、働きたいものです。